ブローチ

長期出張から帰って来た父からのお土産がブローチだった。

当時の私は何年生だったのだろう。

記憶の曖昧さから推測するに、おそらく小学3年生前後。

もちろん身につける機会などある筈もなく、宝物入れの箱にしまって、時々出しては、眺めていたように思う。

本物の宝石ではなかったにせよ、単なるおもちゃでもなかった。

大きな赤い石がひとつと小さな赤い石がみっつ。ループ状のゴールドで装飾してあり、とても綺麗だった。

おそらく、この時期に、ブローチは時々箱から出して眺めるものと刷り込まれたに違いない。

成人してからも、人並みに、ネックレス、ペンダント、イヤリング、指輪等を身につけることはあっても、ブローチには全く縁がなかった。

何となく、おばさんの装飾品のような気がしていたことも確かだ。

やがて、自分自身がおばさんになり、いろいろなご縁でいくつかのブローチを所持するようになった。

それでも、なかなかそれを身につける機会はなかった。

「ブローチ使いが上手な方は、お洒落上級者だそうですよ」

デパートやブティックでよくそのような声を聞いたが、別にお洒落上級者を目指しているわけでもないし、何はともあれ、私は、イヤリングが好きなのだ。そう思っていた。

そんな私が、ブローチという存在に一目置くようになったきっかけは、映画「ミニヴァー夫人」のワンシーンである。

突然の来客。

失礼があってはいけない相手。

でもこちらとて、卑下する必要はない。

急いでブローチをつけて、凛として客人を出迎える。

この場面でのブローチは、とても存在感があり、主演のグリア・カーソンの気品と美しさを引き立てていた。

このときから、ブローチは、気になる存在なのである。

マスクが必須アイテムとなった昨今、大好きなイヤリングを楽しむことが難しくなった。

今こそ、ブローチにチャレンジする絶好の機会なのかも。

密かに、お洒落上級者を目指してたりして・・・

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